今回の記事では、私が新卒でお世話になった銀行を辞めようと決意した理由について書いております。
・銀行を志望されている方
・銀行で働いていて悩んでいる方
などのお役に立てれば嬉しいです。
理由①:想像と現実のギャップを感じたから
1つ目の理由は、想い描いていた仕事と現実の仕事の間に大きなギャップがあったからです。
よくある退職理由だと思いますが、まんまとハマってしまいました。
就活していた時のイメージと、実際に働いて感じたイメージ、それぞれにかなりギャップがありました。
詳しく説明いたします。
就活していた時の銀行のイメージ
私が就活していた時の銀行のイメージは、非常にクリーンでカッコいいものでした。
・困っている企業や人を、融資を通じて助ける
・企業や人のチャレンジを支援する
・融資先と二人三脚で経営改善に携わっていく
など、説明会やセミナーで聞いた綺麗な部分を信じて、選考を受けていました。
そして内定をもらい、綺麗なイメージを持ったまま入行しました。
働いて感じた銀行のイメージ
実際に働いてみると、学生時代に抱いていた綺麗なイメージは無くなりました。
お金に困っている、お金がないけどチャレンジしたい企業や人を融資を通じて助ける
→しません。
返済懸念がある先には、しっかりとした理由がない限り融資はしません。
例えば私がいた銀行の場合、一般企業の場合は3期分の決算書を提出いただき、財務状況を審査した上で融資判断を行なっていました。
ベンチャー企業などの新興企業の場合、事業計画書を提出して頂き、その他にも不動産や証券など担保となりそうなものを調査して、多くの裏付けを得た上で融資判断を行なっていました。
多くの案件の場合、新興企業向けの融資は金額が小さい事が多く、手間の割に稼げる金額が少ないため、ほとんどの銀行員はやりたがりませんでした。
融資先と二人三脚で経営改善に携わっていく
→ドラマでよく見るパターンですが、ほとんどありませんでした。
確かに重要取引先だったら、よく出入りはしますしディープに付き合ったりもします。
ただ、それはほんの一握りです。ほとんどの取引先は行内の与信管理、格付けなどの時期だけやり取りするような感じでした。
一人の行員で何十社、何百社とかなり多くの取引先を持っていることもあるので、仕方のない部分もあるのかなと思います。
それだけの数があると、既存取引先のメンテナンスだけでもかなり時間が掛かりますので、、、
加えて、新規貸付先を取ってくる時は、開拓準備から開拓後の事務手続きを含めると、もっと時間が掛かります。
なので、業務量的に1つの取引先にそんな頻繁に関わることはほぼ不可能でした。
イメージが崩れた
働く前と働いた後で、全くといっていいほどイメージが変わってしまいました。
というか、就活していた時の自分がいかに適当に都合よく就活していたかを痛感しました。
ここは自分の大きな反省点ですね。。。
ただ、実際に経験してみないと分からない部分も多かったので、良い勉強だったのかなぁと今では思っています。
理由②:銀行業界に対して不安を感じたから
2つ目の理由は、銀行業界に対して不安を感じたからです
具体的にどういう事かいくつか事例を交えて説明します。
システムが古い
銀行業界全体的に機械やシステムは古いです。
特に勘定系のシステムは古い機械が未だに現役で活躍しています。
そうなっている最も大きな理由は、やはりコストだと思います。
世間を賑わせたみずほ銀行の次期システム開発には約4,000億円もの資金が投入されたと言われていますし、掛かった時間も膨大です。
しかし、それと同じくらい新システム導入を阻んでいる理由は、銀行業界全体にある事なかれ主義の考え方だと思いました。
預金業務などは特に顕著で、だいたいベテランの一般職の女性社員が窓口業務を行い、ベテランの男性行員が預金業務を担当します。
そうすると、昔から慣れ親しんだシステムや事務処理を効率化しようとか変えようとかいう気持ちは生まれません。
日々のルーティンワークをいかにミスなくやるか、そこにフォーカスしていました。
長い間、銀行の業務自体が変わらず同じことを繰り返してきたという歴史がそうさせているのかもしれませんが、かなり保守的な文化です。
お客様の大切な資産をお預かりするという立場のため、仕方ない部分もあるとは思いますが、ミスに対して異常に神経質で厳しい文化があります。
体質が古い
銀行の企業体質は非常に保守的で縦社会です。
私のいた銀行は、体裁やメンツを気にする風土があり、頭取は神様、支店長は王様という感じで、外を向いて仕事をするというより内を向いて仕事をしている印象がありました。
例えば、
- 本部から副頭取や審査役などが来る際は何日も前からそれに備えて支店内の融資資料の整理整頓を進める
- 年に2回突然やってくる行内検査の際は、お客様への対応を最低限にしてまで行内検査の対応に追われる
- 期末が迫ってきて目標融資額に達していないと、融資する必要のない取引先にまで一時的に借入をお願いする
などが挙げられます。
銀行という特に不正に厳しい業種なので、仕方のない部分はあるのかな・・・と当時は少し思っていましたが、やはりお客様や取引先の事を考えないで行内の評価や成績を重視するのが当たり前となっている状況には違和感を覚えました。
銀行だけでなく、他の業界でもこのように内部の評価を異常に意識する企業はあるのかもしれませんが、私はそういうスタンスで仕事をする事に抵抗がありました。
青臭いですが、自分の気持ちと合わないことをやり続ける事で精神が擦り減っていくのが耐えられなくなってしまった部分は大きかったです。
銀行の収益モデルが弱くなっていると感じたから
3つ目の理由は、銀行の収益モデルが弱くなっていると感じたからです。
具体的にどういう事か説明いたします。
超低金利時代で利ざやが取れない
現在、銀行の統合が進むなど、銀行業界全体として再編の波が来ています。
私が働いていた時から既に超低金利時代と言われており、貸出金利による収益は限界を迎えていました。特に住宅ローンは0.7%前後といった超低金利で、他行と0.1%単位で競い合うようなジリ貧の争いでした。
そのため、利益を生むための融資は必然的に事業性融資(法人融資、個人向けアパートローンなど)になってきて、そちらを積極的に売るようにと本部からも上司からも言われていました。
しかし、人口増加している首都圏ならともかく、郊外や地方など人口減少しているエリアでは、新規で融資先を見つけるのも非常に大変です。
そのため、他行で既に借入を行なっている法人、個人の肩代わり提案も積極的に行なっていました。
この肩代わりにおいても、他行の取引先を1件取っている間に自行の取引先が取られるなど、銀行同士で奪い合いが盛んに行われています。
他行から肩代わりをするには金利メリットを押し出すことが多く、必然的に銀行同士で金利を下げあって身を削り合うしかありませんでした。
こういう状況を見た際に、利ざや収入という銀行業のベースの収益モデルは限界にきているのかなと感じました。
手数料が非常に高い金融商品販売
今の銀行は利ざや収益がほとんど取れないため、もう一つの大きな収益源である手数料収入の獲得が重要になっています。
手数料収入とは、投資信託・保険・公共料金・ATM・振込など銀行の金融商品や各種サービスにかかる手数料のことです。
この中でも特に投資信託・保険といった金融商品の販売が評価の際に重視され、積極的に販売するよう言われていました。
取扱商品は銀行によって異なるものの、当時私が働いていた銀行で積極的に販売していた投資信託は、2~3%の購入時手数料や、1~2%の信託報酬などの手数料がかかるもので、非常に高い手数料を取っていました。
そしてそれを主に富裕層や預金残高の多いお客様に向けてご提案していました。
その中でも特に、普段から銀行に来ることが多い、余裕資金がある人が多い、という理由で高齢のお客様にご提案することが多くありました。
確かに目論見通りに運用できればプラスにはなる計算でご提案しますが、もちろん相場の動きは分からないので、運用が上手く行かなければ高い手数料だけを頂くことになります。
そうすると預金にしておいた方がよっぽどマシで、銀行に手数料だけを支払ってお金を減らしていることになります。
そのようにお客様が損をする可能性の高い商品を口八丁で売っていると、人を騙しているようで心が痛くなりました。
そういう風に考えてしまう時点で、自分は銀行員として生きていけないのかなと思ったことを覚えています。
実際、表彰されて出世している人たちは、上手にそういう商品を販売している人でした。
営業職全てに共通するのかもしれませんが、そういう仕事をゲーム感覚、競技感覚でできる人が向いているのかなと思いました。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回の記事では、私が銀行を辞めようと決意した理由について書かせていただきました。
改めて、退職を決意した3つの理由をお伝えします。
- 理想と現実のギャップを感じたから
- 銀行業界に不安を感じたから
- 銀行の収益モデルが弱くなっていると感じたから
もしこの記事が、少しでも銀行での仕事に悩んでいる方や銀行を目指している方のお役に立ったら嬉しいです。
それではまた!